コンサルタント紹介

街の小さな不動産屋はなぜ潰れないのか?

前回に引き続き不動産屋による不動産屋の話です。

人材紹介を行う上で、その企業のビジネスの理解をすることは非常に大事という話は前回差し上げた通りですが、
不動産業界を外から見てたときと中に入って見えるものは全然違っています。
そんな話を今日はしていきたいと思います。

突然ですが、皆さんの地元に「いつ見てもお客さんが入っていないのに長年続いてる不動産屋」はありませんか?

大体「○○不動産」とか「××地所」とかいう屋号がついてる会社です。
ついでに言うと、○○とか××に入るのは大体地名か苗字だったりします(笑)
どう考えてもウェルカムな雰囲気はなく、中にはおじさんがいたりいなかったり、
店の入口には年季の入った、物件情報が張ってあり、街にひっそりと佇む不動産屋さん、見たことありますよね?

あれ不思議じゃないです??なんでお客さん来ないのに潰れないのか。

当然そういった不動産会社には儲けの仕組みがあります。
私が大学生の頃に「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という本がベストセラーになりましたが、「街の小さな不動産屋は何故潰れないのか?」を私なりに考察していこうと思います。

地場不動産屋のビジネスは大まかに下記であるケースが多いです。
①賃貸物件管理による管理手数料
②売却時の媒介取得による仲介手数料
③BtoBの物件紹介による仲介手数料


上記に共通するキーワードは「土地のオーナー(地主様)」と「不動産業者の横のつながり」です。

順番に解説していきます。

①賃貸物件管理による管理手数料
その地域で長くご商売をされている不動産屋というのは、概ねその地域の地主様との繋がりが強いケースが多いです。
その方が保有されているマンションやアパート、ビルなどの管理(清掃、家賃回収、入退去時の精算など)を行います。
概ね管理手数料は月額賃料の5%前後で設定されていることが多いです。
大した金額ではないと思われるかもしれませんが、ストックビジネスであり、管理会社変更は頻繁に起こるものではありませんので、
管理棟数が多くなれば多くなるほど、収益が安定します。
例えば10万円の家賃の部屋が10部屋あるマンションを20棟管理して、9割の稼働であれば管理手数料(5%換算)は月額80万円になります。
1人や2人でやっている会社であれば管理棟数が少なくてもビジネスとして成り立ちます。

②売却時の媒介取得による仲介手数料
地主様との関係が強く、管理を請け負っている会社が最も強いのがこの点です。
その方がご自身の物件の売却を考えるときはどんな時か?最も多いのは「相続(もしくは相続準備)」です。
上記の流れで売却の依頼を頂き、専任媒介契約を結びます。
※人材紹介で言うところの法的制約(他社から採用したら罰則)ありの独占求人発注のようなものです。

③BtoBの物件紹介による仲介手数料
でも売却の依頼を頂戴しても、その不動産に家を買いたい人や土地を買いたい人は来ませんよね?
ではどうやって販売するか。
ここが不動産仲介会社が最も人材紹介会社と違う点です。
その不動産会社はまず購入可能性がある会社に話を持って行きます。
建売住宅やマンションなど自社で建物を建てるための用地を探しているような会社です。
ここで話がまとまればめでたしで、例えば1億円の土地であれば買主、売主双方から約3%の報酬(計600万円)を頂く事ができます。
ちなみに自分で売り買いどちらも仲介することを「両手」と言います。
上記でまとまらない場合、どうするか?これはBtoCの強い不動産屋に協力を仰ぎます。
その場合の報酬は売主分のみになりますが、それでも大きな金額です。
これを「別れ、片手」と言います。

つまり街の小さな不動産屋にとって、個人のお客さんは主軸ではなく、
重要なことは、土地のオーナーである地主様との関係構築であり、その輪を広げていくことが最も有効なビジネスの手段となります。

次に同業者との横のつながりです。
例えば人材業界ではRPOなどの特殊ケースを除いて、リクルートとパーソルキャリアが求人と求職者で別れて手を組むということは有り得ないと思います。
しかし不動産業界ではそれが普通です。当然同業者はライバルではあるのですが、それと同時に実は非常に大事なパートナーでもあります。

一般的に不動産業界は「協調性があるというよりは一匹狼でめちゃくちゃガツガツしている」というイメージを持たれますが、
それはマンションや建売住宅などメーカーとして物件を販売していく場合は有効ですが、不動産売買仲介のハイパフォーマーは全く違います。
もちろん数字への意識や商売への嗅覚は絶対に必要ですが、
それにプラスして自身を取り巻く環境を冷静に判断し、同業の方々との関係性を重要視し、自身を信用頂くことで、成果を上げていく方が非常に多いのです。

いかがでしたでしょうか?少し不動産業界のイメージが変わりませんか??
本当に不動産業界は面白い世界です。もっともっと異業種の優秀な方に業界を知ってもらいたい。切に思っています。

今回はこんなところで!また来週!